詩・散文などの埋葬地です。時々行楽の記録もうろうろ・・

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2010-08-27 Fri 20:29
意地汚く生きて強かに死に、
 句読点一つない文章のように流れるような勢いのまま、理解しようとする他人の労苦を一切置き去りにして、おれはおれの内にしかない十三階段の頂点へと駆け上がる。おっと縄を忘れてきたぜと叫びながら、そこからプールに飛び込む子供のようにダイブするのだ。全身の血が、おれの速さに追いつけず取り残される感覚。あるいはその粘性で空気にしがみ付くかのように。
 地べたに抱擁されるまでの長くはない時間を精一杯有意義なものにするため、おれは全生涯の内で最も刮目したままこの時を過ごす。ラストシーンまで絶対に閉じないと決めた瞳にせわしなく来襲する映像の数々は、記憶と照合すれば、それは紛れもなくおれという閉鎖回路の活動の記録だ。一昔前のテレビのようにあせた色味でダイジェストされてゆく、行儀の良い幸福な人生。眠気が優しい手をまぶたにかざしかける。
 その時、それを厳しく払いのけるように視界を割り裂いたのは、鮮烈な色彩の奔流だ。夏の南国よりも激しい青と緑と赤、原色の怒涛。同時に、熱く濃厚に湿った空気が、落下の勢いに詰まる胸をいっぱいに満たしたような気がした。全身の細胞が悟了する。これは多分、おれがおれになる遥か以前のわずかな記録の残滓。最後の瞳に何としても映し取りたかった景色だと。懐かしさではなく沸騰する血が全身を走駆して、叩きつけられる有無を言わさぬ直観。多分おれは、衰えがすなわち死である世界で、原色の染みの一点、吼える四足の何かであったのだ。…

極限に濃縮された時間が終わると、熱気の篭った胸から最後の息を吐いておれはしばらく呼吸をやめる。あらゆる有機的な耽溺を清算し、骨片だけの端的な存在となって、じっと身なりをひそめてみるのだ。そうしていずれまた吸いたいと思う空気を見つけた時、おれは短くも新しい人生を始める。
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