2015-01-21 Wed 18:34
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「 失郷 」
故郷を離れる寂しさよりも 故郷が私から離れてゆく寂しさは いっそう勝るものがある 久方ぶりの故郷は 姓が変わり 見違えて女になった幼馴染の娘のごとき よそよそしさと触れがたさを その身に纏っていた 私は周章し 辺りを徘徊する 群れから放逐された狼のように 連れ合いを奪われた牡鹿のように 不穏な鼓動と同じ速さで鼻をひくつかせながら 嗅ぎ慣れたぬくもりを探して 蹌踉とさまよう 私の故郷は何処へ行ったか 私の故郷は 誰かが小脇に抱えて走り去ったか 何かが日の差さぬ場所へと追い遣ったか あるいは 見初められるまま福家へと嫁ぎ 養われて在るのか 食うや食わずに耐えかねた末に… 懐かしい人人を置き去りにして 私を捨てて 今は誰にその身を委ねているか 見知らぬ瀟洒な女の姿に かける言葉を失する スポンサーサイト
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