2014-07-03 Thu 20:21
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スキップで道路を渡る少女の影を浮かばせ
初春の残陽がもったいをつけて落ちる 土に触れたい願望で昔を恋う青年の みじめな足元をますます温めるために 明日がまたくるのか 定食屋には新しいガスボンベが運ばれ 自転車の籠に袋一杯の食材を載せた女が ペダルを軋ませて行く 青年は生来 贈り物の包装を破かぬよう配慮する質であったから 彼はこの日も 街の屋根々々が色あせるのを見守る防人であった 星が出るまで 知己の顔を思い浮かべては数え 小さな飴の一かけを口にして 汚泥のような寝床を延べて眠る この町では犬の遠吠えも響かぬ 幸いかもしれぬ静けさが夜にはあった 太鼓腹の男のくぐもった鼾も ぶたれた少年の醜い痣も 包摂して 夜は美しい均衡を保つのだ 誰かが噛んでずたぼろにした親指の爪も その一部でしかない やがて淡い昇陽に星々が敗れゆく頃 日に日に傾斜を増す坂道を 再び青年が行く 横断歩道を斜めに歩んでみても 決して変わることのない道幅 死が遠すぎて喘息するのだ 革靴を履きこなしてもなお 彼はまだ若さを患っている スポンサーサイト
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